卒業研究2007(3)外国人家庭の子どもの保育について

幼児教育学科 [2007年8月 8日]

永田、中西、藤井(指導教員 荒井 聡史、片山 勝茂)

動機・目的

近年、メディアを通して“国際化社会”ということをよく耳にするようになった。街中で外国人の方を目にすることも今では珍しいことではない。そこで、福井県には外国人家庭の方々がどのくらいいるのかということを調べてみようと思った。

また、実習に行った園で外国人家庭の幼児を受け入れていて、その幼児たちと接してみて、いろいろな戸惑いや困難があった。そこで、現場の先生方は外国人家庭の子どもと保護者に対してどのような対応をしているのか、また外国人の受け入れに対する幼児教育学科の学生と現場の先生方の考え方にも興味を持ち、これから現場に出て行く者として今後の参考にしたいと思い、調べていくことにした。

研究方法

  1. 文献研究
    文献を読んで基本的なことを調べる。
  2. アンケート調査
    本学の幼児教育学科2回生を対象にアンケートを行う。
  3. インタビュー調査…
    福井県庁・越前市役所で具体的な統計や取り組みについての話を聞く。 幼稚園・保育園で実際に外国人家庭の幼児を保育している方の話を聞く。

文献研究

大場幸夫他(1998)『外国人の子どもの保育−親たちの要望と保育者の対応の実態−』を読み、次のような知見を得た。まず、言葉が一番問題になること。次に、家庭によってどれくらい日本に滞在するかが異なり、配慮が必要なこと。そして、子どもが親と園とを結ぶ役割を果たす場合が多いことなどが分かった。

アンケート調査

幼児教育学科2回生171名にアンケートをしたところ、131の回答を得た。回答によると、半分以上の学生が実習先などで外国人の幼児とふれあっており、外国人の幼児を受け入れている園が予想以上に多いことが分かった。また、外国人の受け入れについて質問したところ、外国人幼児の保育に対して良い印象をもっている学生が多いことが分かった。

インタビュー調査

まず、福井県庁で県の取り組みなどについてインタビュー調査を行った。しかし、県での取り組みは特になく、市町村ごとに行っていることが分かった。また、越前市にポルトガル語が話せる保育補助職員がいることが分かり、越前市役所でもインタビュー調査を行った。保育補助職員は外国籍の幼児の保育補助や保護者への連絡業務として通訳やおたよりの翻訳、外国籍の保護者からの相談を受けたりなどしていると知り、さらに興味をもち、直接話を聞くことにした。

また、県庁で市町村別の外国人数を伺ったところ、福井市と越前市に外国人が多くいることが分かったため、二つの市の幼稚園と保育園にインタビュー調査を依頼した。

保育補助職員へのインタビューや保育者へのインタビューから、入園当初の外国人幼児にとって、保育補助職員は心強い存在であること、また保護者にとっても信頼できる存在であることがわかり、保育補助職員という立場の重要性を理解することができた。しかし、保育補助職員という立場は、保護者と保育者の間に入り、両方が納得できるようにする必要があるため、大変な立場であることも分かった。

まとめ

以上のように、私たちは文献研究・アンケート調査・インタビュー調査を通して、本研究を行ってきた。本研究を通して、外国人幼児の保育の実態をかなり明らかにすることができた。

幼児の言葉の獲得は私たちが当初想像していた以上に早いので、外国人幼児の保育において言葉の問題はそれほど大きな心配事ではないようである。言葉が通じないことで生じる問題は、保育者と幼児との間よりも、むしろ保育者と保護者とのかかわりの中にあることが分かった。また、外国人の保護者の日本の保育者に対する信頼は厚く、日本の保育園を高く評価しているようであった。

研究を進めていくにつれて私たちの興味も深まり、外国人幼児の保育をいろんな角度からみることができ、以前よりいろいろな人の立場を考慮できるようになったように思う。

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